原 一六四– Author –

地域の歴史城趾コーディネーター
だれも注目しないようなマイナーな歴史に光を当て、独自の切り口で面白く分かりやすく伝えるのが信条。
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日本の秘境に息づく霜月神楽の謎─神々と舞う天龍村の祈りの夜】
長野県の最南端、険しい山々に抱かれ、天竜川の深い渓谷にひっそりと佇む村があります。その名は、天龍村。人々が「日本の秘境」と口にするこの地には、都会の喧騒とは無縁の、荘厳な静寂と、古より受け継がれてきた熱い祈りの物語が眠っています。 この記... -
大蛇伝説と金鶏伝説に彩られた松川町─歴史と伝説が息づく果樹の里
中央アルプスと南アルプス、二つの雄大な山脈に抱かれた伊那谷のまん中。ここに、歴史と伝説が息づく「くだものの里」、松川町があります。 春には淡いピンクの花が里を彩り、秋にはたわわに実った果実が甘い香りを放つ――。そんな穏やかな風景の裏には、戦... -
最終話【風が語り継ぐもの──薄雪草に託して】
黄昏の峰、最後の決断 八月二十五日の朝方、最終決戦の火蓋は切って落とされました。秘密の間道の在処を知った武田勢が、入口の大岩をとり除くと同時に、神之峰の城をめがけて怒涛のように攻め上がって来たのでございます。 麓から迫りくる地鳴りのような... -
第六話【秘められた道、死守する姫君】
迫り来る運命の刻 膠着状態が続いて、もう十数日になりましょうか。神之峰城は険しい山城という地の利によって、武田の大軍を寄せ付けず何とか持ちこたえておりました。しかし、永遠に守りきれるわけもございません。 「久七洞(きゅうしちぼら)」──それ... -
第五話【戦、荒ぶる──信玄の怒りと炎】
哀しみの淵からの奮起 ──八月十二日、早朝。 天竜川の川面には深い霧が立ち込め、かけがえのない精鋭のほとんどを失ってしまった昨日の激戦が、まるで嘘のように静まり返っておりました。時折り河原を渡るカジカの高く澄んだ鳴き声が、より一層の物哀しさ... -
第四話【戦の気配──揺らぐ平穏】
もたらされた運命の書状 綾姫様と伸之介殿が、姫滝のほとりで儚くも固い約束を交わされたあの月夜から、幾日も経たぬ頃。神之峰の城には、いよいよ戦雲が現実のものとして垂れ込めてまいりました。 ──天文二十三年七月。武田信玄が、神之峰の城へ書状を持... -
第三話【運命の出会い──月夜の誓い】
淡き恋の予感 綾姫様が、その類まれな才能を文武に渡って開花させていらっしゃった頃、神之峰の城下にも、かすかに戦の匂いが漂い始めるようになっておりました。城主である頼元様も、そして父君の頼康様も、眉間の皺を深くする日が増えたようにお見受けい... -
第二話【知久家の姫としての学びと鍛錬の日々】
若葉萌ゆる神之峰の姫君 綾姫様がお生まれになってから、瞬く間に十余年の歳月が流れました。神之峰の城にも、ここ安養寺の境内にも、何度目かの若葉が目に眩しい季節が巡ってまいりました。わたくしの足元に咲き誇る大藤は、変わらず見事な紫の霞をたなび... -
第一話【一輪の花のような姫の誕生】
神之峰に寄り添う谷の風景 信濃の山々より流れ出ずる清流は、伊那の谷を潤し、遠州灘へと注ぐ天竜の河。その雄大な流れに見守られるように、神之峰(かんのみね)の城はございました。小高い山の中腹に築かれた城は、決して大きくはないものの、堅牢にして... -
謀反の謎と茶人としての再起~妻だしの悲劇と最期│荒木村重はなぜ信長を裏切ったのか?(後編)
※この記事は、戦国武将・荒木 村重の人物伝として3連続で構成しています。当記事は、その「後編」です。 はじめに~逃亡者の後半生、そして残された謎 【中編】では、織田信長に反旗を翻した荒木村重が、居城・有岡城で妻子や家臣を見捨てて逃亡し、その...