星降る里で見つけた、心と体を解きほぐす宝物
長野県の南端、美しい山々に囲まれた阿智村（あちむら）──
「日本一、星がきれいに見える村」として、その名は全国に知られています。夜空を見上げれば、まるで手が届きそうなほどの無数の星々が訪れる人々を優しく包み込みます。
けれど、阿智村の魅力は、満天の星空だけではありません。とろりとした肌触りの優しいお湯の天然温泉。静寂に包まれた豊かな自然。訪れた人の心を癒やしてくれる穏やかな空気が、この村には満ちているのです。
本記事では、知る人ぞ知る、小さくてあたたかい阿智村の魅力をご紹介しましょう。
手が届きそうな星空へ――「ヘブンスそのはら」で体験する夜空のドラマ
阿智村は、環境省が実施した全国星空継続観察で、「星が最も輝いて見える場所」の第1位（平成18年）に選ばれた実績から、「日本一の星空の村」と称されています。
その星空を心ゆくまで堪能できるのが、標高1,400mの高原に位置する「富士見台高原ロープウェイ・ヘブンスそのはら」で開催される「天空の楽園─日本一の星空ナイトツアー」です。
街の光が届かない山頂へは、全長2,500m、高低差600mのロープウェイで約15分間の空中散歩。ゴンドラを降り立つと、そこはまさに天然のプラネタリウム。合図と共に照明が一斉に消されると、息をのむほどの星空が広がります。
星空ガイドによる解説は、宇宙の壮大さや星座の物語を楽しく教えてくれ、私たちを星空の世界へと誘います。季節ごとに変わるプログラムや、寝転がって星を眺められるエリアもあり、星空に包まれるような没入体験ができるのが大きな魅力です。
とろりと肌を包む“美人の湯”――昼神温泉の優しい恵み
阿智村のもう一つの宝物、それが「昼神（ひるがみ）温泉」です。
「美人の湯」として名高いこの温泉は、pH9.7という高いアルカリ性を誇り、その湯はまるで化粧水のようにとろりとした肌触り。
古い角質を落とし、肌をしっとりと滑らかにしてくれる効果が期待できると言われ、湯上がりには肌がつるつるになると評判です。
山あいをゆったりと流れる阿智川沿いには、風情ある旅館やホテルが軒を連ね、静かで落ち着いた温泉街を形成しています。川のせせらぎを聞きながら露天風呂に浸かれば、日頃の疲れが溶けて流れていくように感じるでしょう。
毎朝開催される「昼神温泉朝市」も楽しみの一つ。地元で採れた新鮮な野菜や果物、きのこ、漬物、工芸品などが並び、地元の人々との温かいふれあいも旅の素敵な思い出になります。
人が阿智村に惹かれる理由は、星空のもとにある本当の豊かさ
阿智村が多くの人々を惹きつけてやまないのは、単に美しい星空や良質な温泉があるからだけではありません。この村には、現代人が忘れかけている「真の豊かさ」があるからではないでしょうか。
人と人との距離感が心地よく、せかせかとした日常から解放されるような、ゆったりとした時間軸。村全体で「日本一の星空」を守るために、屋外照明に関する条例を定めるなど、地域をあげて環境保全（光害対策）に取り組む真摯な姿勢にも安らぎを感じます。
阿智村には、華美な観光施設や刺激的なアトラクションはありません。あるのは、夜空に瞬く無数の星々。温泉の温もり。蕩けそうに温かい地元の人々の笑顔。とても素朴で、それでいて贅沢な時間。阿智村にしかない豊かさが確かにあるのです。
心をほどく、阿智村の夜空と優しい静けさ
忙しない日々の中でふと立ち止まり、ただ「星空を見上げるため」だけに阿智村を訪れるのも有りではないでしょうか。
降り注ぐ星の光と、とろりとしたお湯に身を任せながら、「心を解きほぐす時間」がきっと待っている気がします。
